「職人集団・岩切美巧堂」は、受け継がれた伝統技術と最新鋭のビジネスで、多くの顧客から支持されています!

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新型コロナウイルスの感染者が急増し、改正新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言がまもなく発令されるようです。

前回のブログにも書いたように、特に3月になってから、都市圏の百貨店が週末の全館休業、食品フロアを除く休業、営業時間短縮等の措置をとるなど、小売業・流通業・製造業が、極度に厳しい状況に追い込まれています。

また、数十年にわたり老舗百貨店で開催されてきた鹿児島物産展もほどんど中止になり、大きな痛手を負っている事業者がたくさんあります。


そのような中、今回ご紹介する(有)岩切美巧堂は、これまでずっと、自店舗や物産展での対面販売と、自社ホームページでのネット販売を連動させて顧客とのコミュニケーションを密に取り続け、また、現在のような苦境においても痛手を最小限に抑えるために取り組んでおられます。

岩切美巧堂の創業は大正5(1916)年で、百年以上にわたり鹿児島県指定伝統的工芸品の薩摩錫器を製造している老舗です。

薩摩錫器は明治以降、酒器・茶器・花器などの日用品が幅広く愛用されていたらしく、岩切美巧堂においても「桜島」や「『○』に『十』の島津家の家紋」の図柄の商品がほとんどでしたが、現社長の岩切薫さんや専務の岩切洋一さんが県外での修行を終えて家業に就いてから、急須・黒ぢょか・干支の置物・家紋額のほか、最近ではジョッキやタンブラーなど現代のライフスタイルにマッチした新しい商品が増え、現在では300種類を超えるデザインがあるようです。

図柄も鶴・梅・菊などに薩摩切子文様が加わり、また、赤・青・緑・紫・藍・黒など彩りも豊かになりました。


最短でも13工程あり、そのほぼすべてが手作業で出来上がる薩摩錫器は、手に取ったときのずっしりした重みと、独特の温かみが特長ですが、私がもっとも感動したのは、茶つぼの上蓋が自分の重みでゆっくりと沈んで本体とピタッと密着するところです。

1000分の1ミリ単位で削る高度な技術と手先の研ぎ澄まされた感覚により、密閉性の高い容器が出来上がります。

「茶つぼが作れて一人前」といわれるのも「ごもっとも!」です。


2016年9月、創業100年を記念して「薩摩錫器工芸館」がオープンいたしました。


ショールーム薩摩(展示・資料室)、ギャラリー霧島(レンタルルーム、イベントホール)、アトリエ桜島(体験室・休憩)を備えており、温泉施設や物見遊山の観光名所に加えて、霧島の新しい観光資源となっています。

旅行エージェントや製造業の視察・研修も増えているようです。


鹿児島空港に近く、また、空港から薩摩半島や大隅半島に向かうときの分岐点にあるという地の利を生かしたこの工芸館の特徴は、「見る、買う」だけでなく「体験する、学ぶ」や「自分の皿が作れる(@3,000円~)」という「コト」を売りにしてお客様を開拓し、満足したお客様がリピーターとなって「モノ」を買ってくださるというビジネスモデルにあります。

体験室(上)とレンタルルーム・イベントホール(下)


工芸館のオープンに合わせてリニューアルしたホームページを見ると、「行ってみたい、直に触ってみたい、作ってみたい、買いたい」と思ってしまいます。


地元霧島市が取り組む「霧島ガストロノミーブランド」にも参画し、霧島市の行政・団体や観光・特産品関連の事業者とも連携して、国内外からの誘客に取り組んでおられます。


また、岩切美巧堂は、全国の有名百貨店約30店舗で開催される物産展や職人展に出展しており、コアなリピーターは観光客として工芸館を訪れ、豊富な品ぞろえの中からお気に入りの一品を買い求めるようです。

有名百貨店での物産展や職人展で、積極的に顧客開拓に取り組んでいます。


専務の岩切洋一さんは2018年、自動車ブランドのLEXUSが、日本各地で地域の独自性や技術を生かし、新しいモノづくりに挑む若き「匠」を応援する「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」の一人に選ばれ、取り組みました。

「伝統を守りながら新しい感覚やテクノロジーを吹き込み、地域の特性を深めながら、その魅力を世界へ広く発信する」というプロジェクトのコンセプトに沿って、「茶葉だけでなく、コーヒー豆やサプリメントなど幅広い用途で使ってもらうことで、錫器の良さを体感してほしい」との願いを込め、受け継がれてきた技術を駆使して茶筒の特徴である密閉性を確保しながら、かつ、若い世代にも受け入れられるようなスタイリッシュなデザインを採用した「次の100年に続く錫器の新しい形」としての
「SATSUMAの茶筒」が出来上がりました。


岩切美巧堂は、伝統工芸品の老舗でありながら、いや、むしろ老舗であることに胡坐(あぐら)をかかずに、伝統に裏打ちされた技術に磨きをかけ、新しい風を取り入れて発展させるという革新的な取り組みを進めてきたからこそ、老舗であり続けられるのだと思います。


かねてから、「物産展というアナログの営業活動」と「ホームページという優秀なデジタル営業マン」を連動させて顧客とコミュニケーションをとっておくことで、「お客様が買いたいとき、都合のよいとき」に「お客様が使える方法、好きな方法」で買っていただき、また、現在のような苦境においても痛手を最小限に抑えるようとする「職人集団・岩切美巧堂」の取り組みが、皆さんの参考になると思い紹介いたしました。

・(※1)岩切美巧堂

地域彩生コーディネーターの櫨山でした。(^_^)v

次回をお楽しみに♪

See you.