ケンタッキー・フライド・チキンの「V字回復」に見る、「原点回帰」と「弱点克服」の戦略!!



3月7日(日)の「つぶれない店」というテレビ番組(※1)で、日本に上陸してから50年になる「ケンタッキーフライドチキン」(日本KFCホールディングス株式会社)が紹介されました。(※2)

1970年、日本での1号店を愛知県名古屋市にオープンしたとき、創業者のカーネル・サンダース(1890〜1980年)は80歳で、1ピース100円(現在250円)のフライドチキンは日本では未知の食べ物で馴染みがなかったため、1日7,000円しか売れない日もあったようです。

認知度アップを狙って、本国アメリカでもやっていなかった「カーネルおじさん」のプラスティック像を日本の4号店(兵庫県)に立てたことが功を奏し、「唐揚げではない、ケンタッキーフライドチキンという食べ物」は今では誰もがその味を知るところとなり、現在では135の国・地域に23,000店舗以上あるそうです。


そんな不動の定位置を獲得したようにも見えるケンタッキーフライドチキンもここ10年ほど売上が伸び悩み、その原因の一つが、いわゆる「コンビニチキン戦争」で、格安なコンビニチキンが次々に登場したことだということです。

確かにうちの家族も「ファミチキ」「Lチキ」「ななチキ」を食べ比べて「〇〇のほうが好き〜!」とか言ってるし、Hotto Mottoの「から揚げ おかずのみ(4コ入り) @290円」はおいしくて、コスパもいいですよね。

また、チキンだけでなくスイーツの開発担当者が、有名なパティシエなどにテレビ番組の「ガチ審査」で合否判定され、嬉し涙や悔し涙を流すのを観ていると、コンビニのスイーツや弁当・惣菜が格段にレベルアップしてきていることも納得できます。

写真は各社のホームページから借用しました。


日本KFCホールディングスでは売上を回復させるため、「チキン定食」(2013年)、「ビーフハンバーグサンド」(2015年)、「サーモンサンド」(2015年)などを発売したのですが、劇的に客数が増えることはなく、むしろ「チキン専門店であることが伝わりづらくなった」ようです。

恐らく、マーケティングと戦略が最適ではなかったということだと思います。


この窮地を救った救世主が、それまで世界最大規模のファーストフード・レストラン・チェーン企業「ヤム・ブランズ」で働き、2018年に「日本KFCホールディングス株式会社」のCMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)に就いた中嶋祐子氏です。

中嶋氏は、「年に1〜2度しか来店しないお客様が7割もいる」ことと、「ファミリー層には強いが、他のファストフードに比べて若年層に弱い」という日本KFC特有のデータに愕然とし、また、そのことが「自信というより、V字回復の裏付けとなった」と言っておられます。


中嶋CMOが実行した三つの戦略が、「500円ランチで日常食品!」「オリジナルチキンへの原点回帰」「弱点の若年層を意識した新商品投入」です。

500円ランチで日常食品!

 ○クリスマスやパーティなど「特別な日」のイメージから脱却するため、「オリチキ@250円+ビスケット@230円+ポテトS@230円+ドリンクS@200円=合計910円」を500円で提供した。

 ○「から揚げと同じ感覚で、来店が月2〜3度に増えた」お客様が、ついで買いもして、客単価が2%アップした。

 ○ランチがきっかけとなり、夜、家族のために買って帰るお客様が増え、ランチタイムの売上も15%アップした。


オリジナルチキンへの原点回帰

○オリチキをちゃんと美味しく作り、届けることを徹底して日本KFCの根幹を守るため、調理担当者に講習を実施して調理法を再徹底した。

○オリチキをメインとした新たなパック商品を投入し、チーズソースやバーベキューソースを付けて新たな食べ方を提案した。

○部位ごとに骨を抜いて丸かじりする方法や、ポン酢や練乳をつけて食べることなどをSNSで紹介している。


弱点の若年層を意識した新商品投入

○コールスローS@230円、カーネルクリスピー@230円、ビスケット@230円、ポテトS@230円、てりやきツイスター@340円


中嶋祐子氏の「ケンタッキーをV字回復させたスゴい戦略」により、12月以外の月の売上が、多い月は40%近くアップし、就任した2018年は1,181億円(前年比104.3%)、2019年は1,287億円(前年比109.0%)で過去27年間で最高の売上を記録したとのことです。


私は、この「ケンタッキーをV字回復させたスゴい戦略」から、「ターゲットを絞り込んだ戦略を立てる」ことと、「自社の強みと弱みを見直し、正しい分析をして正しい戦略を立てる」ことが重要であると、改めて気付かされました。


マーケティング用語の「2:8の法則」(パレートの法則)とは、顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則のことのようです。

2割の優良顧客に対しては、オリジナル商品をメインとした新しいパック商品を投入したり、新たな食べ方を提案することで来店頻度が増えて客単価もアップする。

潜在顧客に対しては、まずは買いやすい価格の商品を提案して来店のきっかけを作り、リピーターへと誘引していく。

このようなターゲットごとの戦略が、客単価とリピート率をアップさせ、総売上のアップにつながっていくのだと思います。


また、いわゆる地域特産品にも「万能」や「オールマイティ」などと表示された商品が散見されます。

自社商品の弱みを「見て見ぬふりする」と、「二兎追うものは一兎をも得ず」という結果になってしまうだろうと思います。


(※1)TBSテレビ「つぶれない店」

(※2)ケンタッキーフライドチキン

地域彩生コーディネーターの櫨山でした。(^_^)v

次回をお楽しみに♪

See you.